夕方の光が差す古書店。制服に深緑のエプロンを着た鳴海が、古い木のカウンターに座っている。

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望月鳴海の店番日記 · 横書き

最後に、もう一人

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配信でドラマを見ていたら、エンドロールが始まった途端、画面が小さくなった。

人の名前が端へ寄せられ、その横に次の回が出てくる。さっきまで大きな顔で泣いていた人より、次に泣く予定の人のほうが、もう広い場所を使っている。

まだ曲を聴いているんだけど。

次の回を止めるために、リモコンを取った。何もせずに座っていれば、今の回を最後まで見られると思っていた。最後の数分だけ、こちらの手数が要る。

あの人たちは、全員分ちゃんと流れるつもりで下から来ているのに。

学校の発表会で拍手をしている時も、終わる場所が分からなくなる。

壇上の人がお辞儀をしたので拍手した。司会が「それでは、盛大な拍手をお願いします」と言った。

今のは、音量を測っただけだったらしい。

拍手は、手を叩けば始められる。やめる時のほうは、あまり習っていない。私は周りの音が小さくなったら、少しずつ弱くする。全員に聞こえる所へ、最後の一回だけ置きたくない。

ときどき、妙にゆっくり叩く人がいる。

ぱん。ぱん。ぱん。

周りがやめても、その一人はまだ褒めている。私は膝へ戻しかけた手を、もう一度持ち上げる。感動が深まったわけではない。まだ片づけてはいけない気がしただけだ。

ようやく静かになりかけると、壇上の人がもう一度頭を下げた。

お辞儀を見て、また手を叩く。拍手を聞いて、また頭が下がる。どちらも丁寧なのに、どちらからも帰れなくなっている。

最初に真顔へ戻れる人を一人、置いておいてほしい。

司会の人がマイクへ近づいた。助かったと思った。

「最後に、先生から一言いただきます」

終わりを知らせるために、新しい人を呼ぶ。

先生は「本日は、皆さん本当に」と話し始めた。手は休められる。そこはよかった。私は膝の上で指を一本ずつ曲げてみた。

一言の中には、準備の苦労と、今日の感想と、来年への期待が入っていた。かなり奥行きのある一言だった。

途中で先生が「最後に」と言った。

まだ中にもあった。

そこから、今まで名前の出ていなかった人たちへのお礼が始まった。一人目に言うと、次の人も呼ばないといけなくなる。発表した人、準備した人、手伝ってくれた人。立派な発表会だったことが分かるほど、終わりから遠ざかっていく。

話が終わると、司会が先生へ頭を下げた。

「長時間、ありがとうございました」

私たちには、「速やかに教室へ戻ってください」だった。

この話の一冊

映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ――コンテンツ消費の現在形

稲田豊史 著
光文社・光文社新書

映画や映像を倍速で観る人たちへの取材を通して、その視聴スタイルを生む事情と、映像・出版コンテンツの受け取られ方を考える一冊。

鳴海のひと言

私は曲が終わるまで待ちたい。でも、早く観たい人にも事情はあるらしい。著者自身が仕事で倍速視聴をしていたという公開部分が気になる。「せっかちだから」で片づくなら、取材する用事もなかったはずなので。

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次は、何を読もう。

日記をもう一篇読むか、今の好みで本を探すか。気が向いたほうへ。