夕方の光が差す古書店。制服に深緑のエプロンを着た鳴海が、古い木のカウンターに座っている。

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望月鳴海の店番日記 · 横書き

友達はいらない。誘わなくていいとは言ってない

本をめくって読む

友達は多いほうがいい、と言われても、何人くらいから多いことになるのか分からない。

本なら棚に入らなくなったところで多いと分かる。友達は棚に入れられない。約束と連絡先が増えて、先に私の予定が入らなくなる。

一人でいるほうが楽なのは本当だ。食べたいものを決めるだけで、会議をしなくていい。

「何でもいいよ」と言った人が、「麺の気分じゃない」と言う。じゃあ何の気分なのか聞くと、「何でもいい」。

正解はあるけど、自分では発表しない形式らしい。友達の昼ご飯を当てる番組に、いつ出場したんだろう。

一緒に食べ始めたら、「一口ちょうだい」が来る。

一口の大きさを決めるのが、食べる側なのも気になる。人の皿では、ずいぶん口が開くね。

私はポテトを頼んだだけなのに、真ん中へ置かれることがある。細かく分かれている料理は、本人の許可が取りにくいらしい。一本なくても困らないでしょう、が何人も来ると困る。

その点、食べ放題なら平和かもしれない。

と思ったけど、今度は「元を取る」が始まる。

好きなものを食べに来たはずなのに、途中から値段の高そうなものを見極める時間になる。お腹がいっぱいの人が、まだ皿を取りに行く。食欲は終わったけど、経理が帰してくれない。

私は安いおかずが好きなこともある。そこで「それなら家でも食べられる」と言われるのが嫌だ。

そうだけど、今ここで食べたい。家でもできることを全部禁止されたら、まず座れなくなる。

元を取るといえば、あと少し買うと使えるクーポンも変だと思う。

いらない物を足すと、お得になる。足した物の値段もちゃんと払っているのに、値引きされた部分だけ何度も確認してしまう。

私は前に、値引きまであと少しだったので消しゴムを買った。使う物だから無駄ではない。そう説明できる物を、売り場で探した。

その時間で、買う予定だった本の試し読みくらいできたと思う。

消しゴムはまだある。使い切る前に、また消しゴムが必要になるほど間違えたくもない。

友達と集まる理由にも、もう少し分かりやすいものが欲しい。

「みんな来るよ」だけだと、私が行って何をするかが分からない。人数を聞きたかったわけじゃないし、多ければ行きたくなるとも限らない。

ただ、この前の誘いは少しよかった。

「あと一人いれば、団体料金になるんだけど」

私のどこが必要なのか、はっきりしていた。

誰でもいい感じはする。でも、誰でもいい用事で、私じゃないと困るような顔をされるよりは助かる。

何をするのか、何時に帰れるのかを聞いた。内容も嫌いではなかったので、行くことにした。

「助かった。鳴海が来てくれてうれしい」

そこは値引きがうれしいで通してほしかった。

急に友情で包むと、次から断りにくくなる。

この話の一冊

友だち幻想

菅野仁 著
筑摩書房

人との距離やつながり方を考える社会学の入門書。

鳴海のひと言

友達を増やす前に、他人に何を期待してるのか考えたい人に。『私に都合のいい距離で、私が呼んだときだけ来てほしい』まで友情に含めると、相手の勤務条件がひどいことになるので。手っ取り早く人気者になる方法が欲しいなら、別の本を。

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Amazonのアソシエイトとして、After 6 Laboは適格販売により収入を得ています。

鳴海の紹介と、本の詳しい情報を見る

次は、何を読もう。

日記をもう一篇読むか、今の好みで本を探すか。気が向いたほうへ。